これは急ぎの用だから、ゆっくりやってくれ
いつも当ブログをお読みいただき、ありがとうございます。
昨日、地元の祭りを見物に行って、神社の石畳で思いっきり転倒した半平です。
めっちゃ恥ずかしかったです。
みなさん、足元にはお気をつけくださいませ。
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さて先日、そんなそそっかしい私こそ見るべき映画を見てきましたので、今日はその話をしようと思います。
2010年4月20日に起きた「メキシコ湾原油流出事故」を題材にした、映画「バーニングオーシャン」。
この映画の元となったのはBP社の石油プラットフォーム「ディープウォーター・ホライゾン」で起きた爆発事故で、11人の人々が犠牲となり、アメリカ史上最悪の原油流出を引き起こしました。
メキシコ湾の漁業や生態系に深刻な打撃を与え、今でもその影響は残っていると言います。
この事故の原因は一言で言えば、「安全軽視」なんですが、当時掘削作業はかなり遅れていて、このまま行けば損失が出かねなかった。
そこで会社の幹部が必要な安全テストを行わずに(あるいは形だけ行って)作業を強行した結果、重大な事故に至ったとのことでした。
事故に遭遇した作業員たちが、いかに生還するかを描いたパニック映画でもあるんですが、「コスト優先の会社幹部」VS「安全優先の現場技術者」の対立(そして後者が負ける)。
あるいは現場への不当な介入、駄目な意味で官僚的な企業体質などが最終的に11人の尊い命を奪うまでの過程が淡々と描写されています。
日本での宣伝を見る限りではパニック映画として売り出されてる印象でしたけど、作り手が強調したかったのはそうした「組織の病理」や、最悪の状況下でも事態収拾に最善を尽くした現場技術者の姿なんだろうと思います。
この前、NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」で巨大クレーン船で働く人たちを取り上げていましたけど、そこの船長さんは作業がどれだけ遅れようとも、あくまで安全を優先されていました。
それが人命に関わる作業をする上でのあるべき姿なんでしょうが、まさに対照的な姿でした。
小早川隆景(1533〜1597)
「中国の覇者」毛利元就の三男。毛利家随一の知将と言われ、豊臣秀吉の信頼も厚く、六大老の一人にも叙せられた。
本文で紹介した言葉の他にも慎重や熟考の重要性を説いた言葉が多く、「分別とは何か?」と問われて、「長く考え、遅く決断すること。根本に仁愛の念を置けば、思慮が外れても大きく間違うことはない」と答えたらしい。
さて、戦国武将の小早川隆景はよく部下に「これは急ぎの用だからゆっくりやってくれ」と言っていたと言われています。
逆説的な言い回しですが、色んな解釈が成り立つと思います。
例えば急ぐ用というのは、大事な用であることが多いから、慎重にやってくれ。
あるいは、急いでるときは雑になって思わぬ失敗を犯しやすいから慌てずにやってくれ。
いずれにせよ、含蓄のある言葉でしょう。
そして、私にはいささか耳の痛い言葉でもあります(笑)
と言うのも、私はADHDの特徴でもある衝動性や焦燥感もあって、ほんの少し見直しをしていれば防げたであろうミスや、もう少し時間をかけていれば犯さずに済んだであろう失敗をちょくちょくやらかしています。
通っている事業所の職員さんにも「見直しはしましたか?」とか「ゆっくりやってくださいね」とかよく言われてます(笑)
私やBP社の幹部は、小早川隆景やクレーン船の船長さんの爪の垢を煎じて飲んだ方がよさそうですが、急いで失敗する方が結局損失は大きくなると思うのです。
それよりかは、時間や手間を多少かけても丁寧な仕事をした方が、人の信頼とか得られるものはきっと多い。
急いでる時こそ、ゆっくりと足元を見て歩きましょう。
慌てない、慌てない。
今日はこんなところです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
ありもしない縄に縛られる
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春は出会いと別れの季節と申しますが、私の通っている就労移行支援事業所でも就職をして退所する人がいたり、反対に新しく入ってきた利用者がいたりして、雰囲気がここ1ヶ月くらいで大分変わりました。
退所した人の中には私と特に仲のよかった人もいて、若干寂しい気持ちもありますが、諸行無常、がんばっていきましょう。
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さて、私は最近Eテレで毎週火曜日の夜に放送されている「オトナの一休さん」というミニアニメにはまっています。
タイトルの如く、主人公は私の敬愛する一休さん。
子ども向けアニメの可愛いトンチ小僧ではなく、史実に即した破戒僧・一休の姿を描いています。
昨年シーズン1が放送されて、今月からシーズン2が放送中です。
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まあ、リアル一休さんの話なので、初っ端からお経にう◯こする話が出てきたり、寺に女性を連れ込んでコトに及ぶ話が出てきたりと、とても子どもに見せられる話じゃないんですが、一休さんの破天荒ぶりに毎回爆笑させてもらっています(ちなみに全て史実に基づいた話だそうです(笑))。
今日はその中から第1則「クソとお経」に出てきた「無縄自縛」の話をしようと思います。
これは元々臨済宗の開祖・臨済禅師の言葉なんだそうですが、読んで字の如く、ありもしない縄に縛られるということ。
臨済禅師は弟子たちの前でお経で自分の尻を拭いて見せた。
[臨済禅師胸像]
当然、「なんて罰当たりな」と弟子は驚きますが、禅師に言わせると「お経=ありがたい」なんて図式は単なる思い込みに過ぎなくて、そんなものに囚われるなと言いたいわけなんですね。
お経に限らず、世の中はこの手の思い込みに溢れているような気がしませんか?
「結婚できなきゃ幸せになれない」とか、「いい大学を出て給料のいい仕事に就くべきだ」とか、他にも色々あるような気がします。
思うに、この無縄自縛の恐ろしいところは縛られていることに気づけないところじゃないでしょうか?
他人に強制されれば反発も湧くでしょうが、自分で自分を縛っている、しかも心や考え方を縛っているだけに縛られていることに気づけない。
それで自分の可能性を狭めて、自分を苦しめ不幸にする。
なかなかに恐ろしいことのような気がします。
私自身を翻って見るに、今やりたい仕事があって、熱烈に好きな人がいて。
そこには情熱とある種の思い込みがあるわけですが、これだって立派な「縄」だと思うのです。
一方で恋をするとか、夢を追うというのは、情熱や思い込みがなければできないという一面もあるわけで。
このバランスを取るのが実に難しい。
じゃあどうすればいいのか?
明確な答えがあるわけでもありませんが、一つは「何かを唯一絶対の答えと思わない」ことが大切なんだと思います。
「自分にはこの人だけだ」、「自分にはこの仕事しかない」、そう思い込むのは自分で自分を苦しめることになりかねないと思うのです。
もちろん、仕事や人を愛するのは大いに結構なことです。
しかし、「それを失えば自分は不幸になる」とまで思い込むのはやめた方がいいと思うのです。
悲しきか、人生における幸せとはある日突然去りゆくことも多いような気がします。
けれど私たちのドアの前には何人もの幸せが立っていて、一人が去っても別の一人がすぐにドアを叩く。
だから嘆くことはないのです。
結婚すること、お金持ちになること、子どもに恵まれること、出世すること、それらは全て幸せの一つの形(あるいは手段の一つ)に過ぎないのです。
いや、「幸せ」というものさえ、縄なのかもしれません。
ありもしない縄に縛られぬよう。
自戒を込めて。
今日はこんなところです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
壺の中から見える空は美しいか?
いつも当ブログをご覧いただき、ありがとうございます。
お久しぶりです。
4月に入りまして、皆さんの周りでも人の出入りや入れ替わりがあったんじゃないでしょうか?
私は大学時代は京都で過ごしましたが、この4月を持ちまして、とうとう大学時代からの友人が京都にほとんどいなくなってしまいました。
時の流れと世の無常をしみじみ感じているところです。
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さて、皆さんは「壷中天あり」という言葉をご存知でしょうか?
昭和に活躍した安岡正篤という陽明学者が座右の銘としていた「六中観」という六つの言葉の内の一つです(ちなみに他の五つについてはこちら六中観―安岡正篤墨跡集。「死中活あり」と「忙中暇あり」は有名ですよね)。
元々は中国の歴史書『後漢書』に出てくる話です。
ある時、一人の男が老人が壺に入って行くのを偶然目にした。
驚いた男は壺から出てきた老人をつかまえて問い質した。
見られては仕方ないと老人は男を壺の中に案内した。
すると、壺の中には花が咲き乱れ、鳥がさえずり、蝶が飛び交う世界が広がっていた−という話です。
ここから転じて、世俗の生活に追われても自分だけの別世界を持つことの意味とされています。
実は私、この言葉を初めて知った時、字面からイメージして「身の回りの小さなことでも広く世の中と関係している」くらいの意味に捉えていました。
正確な意味は後で知りましたが、恥ずかしながら私流の解釈もそれはそれで悪くないんじゃないかと思っています。
私は今、就労移行支援事業所で就職に向けた訓練や勉強をしているところですが、それは自分のためにやっているのであって、だれかの役に立っているわけじゃない。
けれども、仕事に就いてだれかの役に立つための準備ではある。
さながら壺の中にいて、そこから空を眺めているような心境です。
そう、自分のことに汲々としているとしても、それはいつでも広い世界につながっていると思えれば、自分のしていることに意味があると思えてきます。
さて実は私、司書講座の単位を落としてしまいまして、受講期間を半年延長することになってしまいました。
偉そうなことを言っときながらまことにお恥ずかしい限りですが、済んでしまったことは仕方ない。
反省をして、「失敗で開ける道もあるさ」と思って、目の前のすべきことをやって行こうと思います。
今日はこんなところです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
あなただけのためにきっと咲くから!
いつも当ブログをご覧いただき、ありがとうございます。
今日は実にいい日和でしたね。
こんな日はかわいい女性と一緒に出かけたいものですが、あいにく司書講座の定期試験にいっていました(笑)
さて、皆さんは例えば、気合いを入れたいとき、元気を出したいとき、泣きたいとき、聴きたくなるようなテーマソングはありますか?
私はだれかに恋をしたとき、決まって聴いたり歌ったりしたくなる曲があります。
それが今日紹介する「明日咲く花」。
私の好きなさだまさしさんが作詞・作曲して、Septemberという女性ユニットに提供した曲ですが、とりあえず聴いてみてください。
September/歌詞:明日咲く花/うたまっぷ歌詞無料検索
よく頑張ったねって言ってほしかっただけ
あなたが気づいてくれたらそれだけでいい
よく頑張ったねって褒めてほしかっただけ
あたただけの為にきっと明日咲くから
このフレーズがどうも好きでして。
恋をすると何でもがんばれるような、そんなエネルギーが湧きませんか?
そのエネルギーの正体って、つまりこう言うことだと思うんです。
人はみんな、大切なだれかのために咲きたくて、だからがんばれるんじゃないでしょうか。
いや、咲く理由は人それぞれかもしれませんが、少なくとも私は、大切なだれかのために咲きたい。
私には大それたことじゃありませんが、自分の人生で実現したいことがあって、そのために自分なりにがんばってるつもりです。
その実現までの過程でたくさん失敗をしたり、挫折をしたりすることもあるでしょう。
でも、うまく行こうが行くまいが、私はいつでも一生懸命でいたいのです。
自分自身と、大好きなあの人にいつでも胸を張って見せられる花であるために。
とりあえず、来週から図書館で実習なので、がんばって来ます!
http://j-lyric.net/artist/a0004ab/l0102be.html←なぜかタイトルが表示されませんが、歌詞のリンクです。
[花つながりでこんな歌もどうぞ。結局私は、不器用な花でしかいられないんでしょうねえ]
今日はこんなところです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
苦手でもできます
いつも当ブログをご覧いただき、ありがとうございます。
お久しぶりです。
皆様、お元気でしたでしょうか?
私はこの二週間、とある会社へと職場実習へと行かせていただいていました。
人生で初めて民間の会社で仕事をし、8時間労働を経験しましたが、得るものが多い実習でしたので、今日はその話をしようと思います。
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社名は伏せますが、今回実習させていただいたのは、いわゆる自動車教習所の「合宿免許」の斡旋を行っている会社で、私はお客さんに送る書類一式やパンフレットの発送などを主にさせていただきました。
お客さんが希望する免許や教習所によって送る書類が異なり、それを決められた順番通りに封筒に詰め、さらには書類にはマーカーを引きます(これも引くべき場所がお客さんによって微妙にちがう)。
一見、単純そうに見えるんですが、結構色んなことに注意を払わなきゃいけない仕事で、実際にお客さんの手元に届くものなので、かなり緊張感もありました。
その日の発送業務を終えるとどっと疲れてました(笑)
こんな感じの仕事はいわゆる「事務仕事」ではよくありますが、極端に「一点集中型」の私は、この手の仕事が実に苦手なのです。
そのことは以前役所で働いていたときに痛いほど実感しましたが、今回も案の定、ミスを連発しました(実質十日の実習期間の内、ノーミスだったのはわずか二日)。
そのことは折り込み済だったので、精神的なダメージはそれほどありませんでしたけど。
さて、事務仕事が苦手な私が今回なぜ、事務の実習に行ったのか。
それは主に二つの理由があります。
まず第一に事務が苦手、かと言って、例えば工場のラインに立ったり、清掃をするのはもっと向いていないと容易に想像できること。
そして第二に、私が司書を目指しているのはここでも何度か書いてきましたが、単に本や情報の専門家というだけでなく、何十年後の未来にも必要とされるような図書館をつくりたいと思っています。
そのためには得意ではなくとも、ある程度は事務的な仕事もこなせないとさすがにマズい。
「苦手でもできる」ようにするために、あえて挑戦してみることにしました。
そして、その試みはある程度成功したように思います。
時間をかけ、自分なりの工夫を凝らすことで、実習の終盤に近づくにつれて、明らかにミスは減っていきました。
もっと時間があれば、より精度は上がったかもしれません。
人より時間と手間が必要ならそうすればいいと思うのです。
もちろん、いつもそれが許されるとは限りませんし、それでもできないこともあるでしょう。
また、できないことや苦手なことがあること、少なくともそれ自体は恥でもなければ短所でもない。
けれど、自分の望む方向に人生を向けるために、どうしても苦手なことをしなければならないこともある。
その時に自分なりのやり方で、それを乗り越えることができる、これもまた、人生のおもしろさだと思うのです。
今日はこんなところです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
実はステキな旦那様―映画「恋妻家宮本」
いつも当ブログをご覧いただき、ありがとうございます。
先日、我が愛しのマドンナ・菅野美穂が出演している、映画「恋妻家宮本」を見てきました。
菅野美穂目当てに見に行きましたが、映画自体も予想外におもしろかったので、今日はその話をしたいと思います(ちなみに、今回の菅野美穂はちょっとSな役柄で、見ていてゾクゾクしました(笑))。
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この映画の主演は阿部寛。
敏腕刑事、シュールな物理学者、平家の知将、結婚できない建築家など、色んな役柄を演じてきた役者ですが、今回は優柔不断な中学教師の役を演じています。
阿部寛演ずる宮本陽平は、大学時代に妻の美代子(天海祐希。こんな美男美女の夫婦いるわけない)とできちゃった結婚。
一人息子も無事に独り立ちし、50にして初めて夫婦水入らずの生活が始まると思いきや、偶然妻が書いた離婚届を発見。
真意を質したいが、気弱な彼にはそれができず、おまけに生徒の家庭でトラブルが発生し、その対応をめぐって、生徒の信頼を失いそうになる始末。
仕事とプライベートの両方で発生した難問を陽平は乗り切ることができるのか?!
気弱で優柔不断な陽平の葛藤がコミカルに描かれるのがこの映画の見所ですが、想像するに奥さんの書いた離婚届けを見つけて、ショックを受けない男は少ないでしょう。
人間不信や疑心暗鬼に陥るかもしれません。
陽平もそうなりかけますが、作風のためか、あるいは陽平がお人好しの人物として描かれているためか、そこに暗い印象はありません。
むしろ、どこか可笑しく、クスクス笑いながら見ることができました。
私は一度こうと決めたら、周囲の思惑もお構いなしに突き進む傾向がありますから、正直言うと、優柔不断な人をみると、イライラすることもあります。(一応自己弁護しときますと、別に周囲の人がどうでもいいと言うわけではなくて、自分なりに思いやりはあるつもりです。「だれかに嫌われる可能性」vs「自分に嘘をつくことへの後悔」という状況になったときに、後者を取ることが多いということです)
しかし、「優柔不断」さと言うのは一面では周囲への気遣いや、優しさでもある。
それぞれの性格に一長一短があって、何か意味があって存在していると思うのです。
プライベートと仕事で、周囲と自分自身に振り回されて右往左往する陽平の様は、凡人と言えば凡人そのものですが、その中から自分の気持ちに気づいて、自分なりの答えを見つけ出していく。
そして、自分は「決断できない」のではなくて、大切な人の気持ちを考えた上で色んな決断をしてきたことに気づく。
宮本陽平は、結構ステキな旦那様だと思うのです。
ちなみに、私も好きな女性と結婚したいと思いますが、いったいどんな旦那さんになるんでしょう?
少なくとも、奥さんにきちんと言葉に出して「ありがとう、大好き、愛してる」って言えるようになりたいですね(笑)
今日はこんなところです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今日までそして明日から 吉田拓郎 - 歌詞タイム
[言わずと知れた吉田拓郎の名曲ですが、この映画の主題歌に起用されています。シンプルだけど味わい深い歌詞。最後に載せておきますね。
そして今、私は思っています。明日からもこうして生きて行くだろうと~♪]
ただのサラリーマンがスーパーマンになる時―高杉良『あざやかな退任』
いつも当ブログをご覧いただき、ありがとうございます。
バレンタインにチョコレートがもらえそうにないので、いっそこっちから渡そうかと考えている半平です(笑)
さて、今日紹介するのは私の好きな高杉良さんの作品で『あざやかな退任』です。
主人公の宮本正男は、自主独立路線を貫く中堅エレクトロニクスメーカー・東京電子工業の副社長。
彼は長年、同社の創業社長である石原修の女房役を務めてきました。
そんなある日、石原が急死します。
カリスマ社長の突然の死に混乱する社内。
その間隙を突いて、東京電子工業を支配下に置くことを画策する、東亜電産の佐竹社長。
順当に行けば、宮本が社長になるところですが、それをすれば東亜電産から送り込まれた専務の野村に社長の椅子を譲らざるを得なくなる・・・。
様々な思惑が錯綜する中、宮本が打った手は?!
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要約すればこんな感じですが、この小説、タイトルが出オチになっています。
タイトルの示すとおり、宮本は社長にならず、副社長も退任し、最年少常務の吉田を社長にすることで東京電子工業の自主独立路線を守ります。
そこに至るまでの宮本の葛藤や東亜電産との暗闘、それを取り巻く人間模様がこの小説の見所です。
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私は大学では経済史や企業史の研究をしましたが、それもこの小説を読んだればこそかな]
宮本が社長にならないという決断を下す、まさにその瞬間、彼は普通の人からスーパーマンになったのだと、私は思っています。
この小説は石原の死から宮本の退任まで、わずか数日の出来事を描いていますが、その短い間に、宮本の心は振り子のように何度も揺れます。
石原社長の下で苦労したし、サラリーマンである以上、出世はしたいし、社長にもなれるのならなりたい。
けれど、長年仕えた石原の遺した会社を、むざむざ東亜電産にも渡したくない。
両立し得ない二つの命題の間で、迷い悩むその姿は、凡人そのものです。
しかし、社長を吉田に譲ると決心してからの彼は、人が変わったように行動に一切迷いがありません。
東亜電産の圧力を跳ね返し、大銀行の会長を味方につけ、一気に会社の新体制を発足させる―。
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[日本触媒創業者・八谷泰造をモデルにした小説です。東京電子工業の石原社長も八谷をモデルにしたんだとか。次の高杉作品はこれを読もうかしら]
その行動力は、さながらスーパーマンですが、何が宮本を変えたのか?
それはたぶん、「自分の役割に気づいたから」ではないでしょうか。
石原あっての自分であり、自分あっての石原であり。
その石原が亡くなった以上は、彼の遺した会社を守り抜くことが自分の最後の仕事である―そう気づいたことが、宮本をしてスーパーマンたらしめたような気がします。
それは決して「自分なんて副社長止まり」という諦めやニヒリズムではなく、「最後の最後まで石原の副社長である」という、一人のサラリーマンの矜持と誇りがあると思うのです。
人は望むと望まざるに関わらず、あるいは幸か不幸か、人の間で生きて行かざるを得ないもの。
その中で自分なりの役割を見つけること、自分の居場所を見つけることを否が応で迫られるのでしょう。
それは決して簡単ではない。
何十年と探し続けて、それでも見つけられずに人生が終わる人もいるでしょう。
けれど、地位とか、名誉とか、お金とか、他人の評判とか、そんなものではなくて、自分の心の声に耳を傾けてみれば、案外簡単に見つかるのかもしれませんよ。
今日はこんなところです。
最後までお読みいただき、ありがとうございした。
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