続・頂に向かえ―映画「エヴェレスト 神々の山嶺」、夢枕獏『神々の山嶺』
(エヴェレスト)
先日、今公開中の映画「エヴェレスト 神々の山嶺」を鑑賞しました。
値段分は楽しめましたが、阿部寛か原作のファンでもない限り、レンタルで十分かと思います。
阿部寛の演技は実に素晴らしく、また1000ページ以上の原作を2時間の尺にまとめてはいましたが、それだけに原作のダイジェスト版になっているのが残念でした。
せめて、あと1時間尺を長くするか、阿部寛演ずる羽生丈二の人物描写に徹しきればよかったと思います。
さて、私は以前この映画について記事を書きました。
あの時は原作を読み終えたばかりで、強い印象は残りましたが、それをうまく言葉にできなかったことを悔やんでいました。
今回、映画を見たことでそれが少しばかり言葉になった気がしますので、今日の記事ではそれを書きたいと思います。
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順当にいけば、まずストーリー紹介といったところですが、原作の記事(頂に向かえ - 半平のきまぐれ日記)に書いてありますので、お手数ですがそちらをご覧ください。
さて、この物語で私が最も目を惹かれた人物は、やっぱり主人公の羽生丈二です。
痛々しいほどにまで山に人生を懸けた彼の生き様は、私の胸の中に忘れ得ぬ印象を残しました。
しかし、何が彼をそこまでさせるのかが分かりませんでした。
だから、非常にもどかしい思いをしていたんですが、映画版を見てから思い出したことがあります。
アーネスト・ヘミングウェイの短編小説に『キリマンジャロの雪』というのがあります(エヴェレストに行ったり、キリマンジャロに行ったり、忙しいですなあ)。
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その冒頭でキリマンジャロにあるという豹の死体の話が出てきます。
森やサバンナで暮らしているはずの豹がなぜこんなところにいたのか、何のためにキリマンジャロに登ったのか、だれにも分からない。
(キリマンジャロ・キボ峰
キリマンジャロは三つの峰を持ちますが、キボはその最高峰)
羽生もこの豹と同じだと思うのです。
豹はキリマンジャロの頂に何もないかもしれないことに気づいていた。
それでも登らずにはいられなかった。
羽生も富とか名声とかを求めて登っていたんじゃない。
まさに「そこに山があるから」登っていたのだと思います。
人が生きる理由は様々ありますが、人生にとって本当に意味のあることは、それをすること自体に意味があるのだと思います。
もっと言うならば、実りがあろうとなかろうと、それをせずにはいられない。
そんなものに一つでも巡り逢えた人生ならば、幸・不幸は別として、少なくとも意味はあったのだと思います。
(黒豹
『キリマンジャロの雪』には「豹」としか書かれていませんが、私にとってのキリマンジャロの豹は黒豹なのです)
ところで、私は今、自分の適性を見極めつつ、自分の身の丈にあった仕事を探しているところです。
今、そうなるかもしれない仕事の勉強をしています。
それは文章校正の仕事なんですが、これが簡単なようでいて、難しくて奥が深い。
校正の練習をしている時、私は深い充足を覚え、夢中になっています。
校正の仕事に就けるかどうか、あるいはそれで生計を立てられるかどうかまだ分かりませんが、できるならばこの仕事を極めてみたいと思っています。
途中で息絶えたくはないですが、私は「キリマンジャロの豹」になりたい。
校正がそうなるかどうか、まだ分かりませんが、私は自分のエヴェレストやキリマンジャロの頂に向かおうと思います。
今日はこんなところです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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