絶望と希望は案外仲良し(かも?) その① ゲーテ編―頭木弘樹(編訳)『希望名人ゲーテと絶望名人カフカの対話』
(ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ 1749~1832)
このブログの読者の皆さんには既にお察しのことかもしれませんが、私は名言や格言が大好きです。
それらによって励まされたり、気づかされたりするだけでなくて、自分なりに人生経験を積む中で、名言を言った人の心境が実感できる(ような気がする)ようになるのが実に楽しい。
さて、巷に出回る名言集の多くは、ポジティブな言葉を集めたものが多く、ネガティブな名言集というのはあまり存在しないように思います。
そんな中、ネガとポジ、1冊で両方味わえるのが今日ご紹介する『希望名人ゲーテと絶望名人カフカの対話』です。
ポジティブな言葉を多く残したゲーテと、ネガティブな言葉をたくさん生み出したカフカという、二人の対照的な作家の名言を1冊に収めた本です。
今日はこの本の中から、いくつかの言葉を紹介したいと思います。
例によって、私のコメントをつけますので、そちらもお楽しみいただけますと幸いです。
- 作者: フランツ・カフカ,ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ,頭木弘樹
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(絶望しかかっていた私が立ち直るきっかけの一つになってくれた本です。ここで紹介しきれなかった含蓄のある言葉がたくさんありますので、ぜひご一読を)
希望を失ってしまったときにこそ、良いことが待っているものだよ
前職で思いきり挫折をして、初めて本気で生きることが辛くなりました。
でも、あの挫折があったからこそ、別の道が開けた。
前の道を歩いていた自分より、今の道を歩いている自分の方が好きな自分がいます。
望んでかなうことなら、努力に値しない
努力は得てしてなかなか報われず、また報われる保証もない。
そんな時はつい弱気になりますが、この言葉を思い出したいものです。
「私は今、努力に値することをしている」と。
百万の読者を期待しないような人間は一行も書くべきではないだろうね
ありがたいことに1日平均10人程の方々に読んでいただいております、このブログ。
私はいつだって、100万の人々に語りかけるつもりで書いています(格好つけ)。
- 作者: ゲーテ,Johann Wolfgang Von Goete,竹山道雄
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(ゲーテの作品でまず名前が挙がる悲恋小説の古典。当時のヨーロッパではこの小説の主人公を真似て自殺する若者が相次ぎ、発禁にした国もあったとか)
欠点のなかには、その人にとってなくてはならぬものもある。
もし昔からの友達が、欠点をあらためたとしたら、わたしはさびしく感じるだろう
だれにでも欠点があって、それを改めようと人は努力します。
それはある意味では正しいかもしれません。
けれど、欠点も含めてその人を愛することができたなら、それはどんなに素敵なんでしょう。
喜んで行い、行ったことをことを喜べる人は幸福である
読んで字の如し。
毎日行ったことを喜べるようなことをしたいものです。
絶望することができない者は、生きるに値しない
「くよくよするな」、「落ち込むな」、「前を向け」・・・そんな言葉が世の中溢れかえっている気がします。
でも、人間ですからとことん傷ついて、絶望することだってある。
そして、絶望の谷底で何を拾うかで、その人が試されるんだと思います。
- 作者: ゲーテ,Goethe,相良守峯
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(『ウェルテル』と並ぶゲーテの代表作。26歳から81歳までの間に書き継がれたゲーテのライフワークとでも言うべき作品)
ここで、ゲーテ自身の話をしたいと思います。
ゲーテは18世紀に今のドイツの裕福な家に生まれました。
文名を成し、自然科学でも業績を残し、果てはワイマール公国という国の宰相にまでなっています。
こう書くと順風満帆そのものの人生ですが、必ずしもそうではありません。
栄光の影に多くの挫折や悲しみが寄り添った人生でした。
まず、ゲーテは生涯に10は下らないほどの失恋をしています。
その中には彼に死を考えさせたものもありました。
長年連れ添った妻、愛した妹、親友のシラー、そして4人の息子たち、これらの人々をゲーテは見送りました。
また、作品も『若きウェルテルの悩み』以外は、彼の生きている間にはさほど売れなかったと言われています。
宰相の仕事にしても、10年の精励の末に夜逃げ同然の形で投げ出しています。
ゲーテは82歳の長寿を全うしますが、75歳の時に述懐して、「自分の人生で本当に幸福だった時間は1カ月に満たなかった」と語っています。
けれど、一方で自分の人生を「何はともあれ美しかった」とも言っている。
この辺りにゲーテという人の人間性が端的に表れているように思います。
さて、今日はこのくらいにして、最後はこの言葉で締めたいと思います。
人の感情で最も高貴なのは、希望です。
運命がすべてを無に帰そうとしても、それでも生き続けようとする希望です
次回は「カフカ編」と題しまして、カフカの名言をご紹介します。
今日はこんなところです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
また、シェアをしていただき、一人でも多くの方にお読みいただけるチャンスをいただけることは、書き手として何よりの喜びです。
どうぞ、よろしくお願いします。