半平のきまぐれ日記

ADHD(注意欠陥多動障害)の20代の図書館司書が本を読んで、映画を見て、あるいはその他諸々について思ったことを気まぐれに綴ります。(※本ブログはAmazonアソシエイトを利用しています。また、記事中の画像は、断りのない限りWikipediaからの引用、もしくはフリー素材を使用しています)

北方三国志を語ろう!―曹操に恋した瞬間

先日、図書館司書の通信講座のレポートを書いていました。

学生時代から3年ぶりくらいにレポートというものを書きましたが、書き方の勘がすっかり鈍っていたのか、2,000字のレポートに1週間もかかってしまいました。

何にでも勘やコツがあるものだと、妙に感心した次第です(笑)


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曹操(155~220)

宦官の養子の子として生まれる。朝廷軍の将校として黄巾の乱の平定に従事し、頭角を現す。官渡の戦いに勝利し、華北をほぼ平定。南下し、天下統一を目指すが、赤壁の戦い孫権劉備連合軍に敗れ、頓挫した。
魏王にまで登り、漢朝を形骸化させたが遂に皇帝にはならなかった。
詩作にも優れ、その作は現代にも伝わっている。]


さて、今日の本題に入りましょう。

私は子どもの頃から三国志が大好きで横山光輝に始まって、三国志関係の小説や伝記、歴史書の類いを色々と読み漁ってきました。

その中でもいちばん好きなのが北方謙三三国志です。

ハードボイルド小説の第一人者が描く三国志の、無常感漂う世界観とハードボイルド風味に味付けされたお馴染みの英雄たちは、私の琴線を震わせて止みませんでした。



このブログの中でもいつか取り上げようと思っていましたが、今回その念願を実現させることにします。

ただ、北方三国志は全13巻と長く、私の思い入れも深いので、とても1,2回では書ききれない。

そこで、登場人物を一人ずつ取り上げる不定期のシリーズにすることにします。

何しろ、三国志は登場人物の一人一人がとてもキャラが濃いので、そんなアプローチもおもしろいんじゃないかと思います。


三国志 (1の巻) (ハルキ文庫―時代小説文庫)

三国志 (1の巻) (ハルキ文庫―時代小説文庫)

(北方三国志第1巻です。価格も手頃、BOOK・OFFにもよく並んでますので、この機会にぜひ。おもしろさは請け合いです。)



さて、記念すべき第1回目の主人公は、三国最大の国である魏の事実上の建国者・曹操です。

曹操という人物、だいたい小説では野望に燃え、そのためなら手段を選ばない人物として描かれます(『白い巨塔』の財前先生みたいな感じですね)。

正直なところ、私はこういう人が苦手でして、曹操もあまり好きになれませんでした。


けれど、北方三国志曹操は違いました。

特に赤壁の戦いで敗れ、あと一歩のところで天下を逃した後の曹操が実にいい。

それまで生き残るために、そして天下のために後ろを振り返る間もなく、ひたすら突き進んできた彼が、初めて過ぎ去りし日々を省みます。

それまでがギラギラした輝きであるとしたなら、赤壁後の曹操は「燻し銀」であると言っていい。

野心の鎧が取れて、一人の人間に還っていく曹操の姿を見るうちに、私はいつの間にか彼のことが好きになっていました(恋ってこんな感じで落ちるんですかね(笑))。


三国志〈10の巻〉帝座の星 (ハルキ文庫―時代小説文庫)

三国志〈10の巻〉帝座の星 (ハルキ文庫―時代小説文庫)

(今回引用した場面が収められている巻です。曹操張飛の死から夷陵の戦いの直前までが描かれています。この巻あたりから、主だった登場人物が次々死んでいきます・・・)


好きなセリフやシーンを挙げていくと切りがありませんが、一つだけ曹操の臨終の場面を挙げたい。

この小説での曹操は死の淵に立って、一つの夢を見ます。

それは小さな庵で畑を耕し、詩を作りながら一人暮らす夢でした。

以下、そのシーンを引用したいと思います。


作物を作る喜び、生きることの喜び。詩にして、虚空に散っていくだけで充分ではないか。

喜びが、孤独なものであることが、はじめてわかったような気がした。人と共有できる喜びも、当然ある。しかし、ひとりきの深い喜びもあるのだ。なによりも、言葉が流れるように出てくるのが嬉しい。聞いているのは、作物であり、小川であり、大地であり、蒼空だった。

「なにもいらぬな」
自分の呟きで、眼が覚めた。

(北方謙三三国志』第10巻、94~95頁より)

どうです?

その生涯を賭けて天下を追い続けた男が、最期に見た夢は、皇帝になる夢でも何でもなくて、ただ一人の人間として、自分だけの喜びを噛み締める夢だった。

これって、何だか深いと思いませんか?


私はその意味を知ることができる程には、まだ人生について分かっていないのかも知れません。

けれど、理由はよく分からないけど、このシーンが心にかかる。

私はこのシーンを何度となく思い出して、それについて考える。

小説の一つのシーンにここまで思い入れられるってのも、ある意味幸せかもしれません。



最強武将伝「三国演義」OP
(5,6年前に日中共同製作で三国志のアニメが放送されました。これはその主題歌ですが、北方三国志の世界観に不思議とマッチしている気がします。私が北方三国志を読む時、よく脳内BGMとして流れます(笑))


今日はこんなところです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また、例によりまして、シェアをしていただけますと、大変光栄です。
よろしくお願いします。