半平のきまぐれ日記

ADHD(注意欠陥多動障害)の就労移行支援事業所に通う20代が本を読んで、映画を見て、あるいはその他諸々について思ったことを気まぐれに綴ります。(※本ブログはAmazonアソシエイトを利用しています。また、記事中の画像は、断りのない限りWikipediaからの引用、もしくはフリー素材を使用しています)

女ったらしの純愛物語

いつも当ブログをご覧いただき、ありがとうございます。

私が最近気に入っている漫画で『ビッグコミック』に連載中の『荷風になりたい』(原作・倉科遼、作画・ケン月影)いう作品があります。

どういう漫画かと言うと、作家・永井荷風の生涯を主にその女性遍歴から描いたものなんですが、これがまあおもしろい。



内務省のエリート官僚の父の元に生まれた荷風(本名・壮吉)は、当然のごとく父のようなエリート官僚になることを求められますが、その期待を裏切り女遊びと文学に傾倒します。

父の勧めで結婚もするんですが、これも荷風の浮気が原因で程なく離婚。

ことごとく父の期待を裏切り、放蕩な生活を送りながらも心のどこかで真面目に活きたいと望んでいるようで。

女性と刹那的な遍歴を繰り返しつつ、持続的な愛情を望んでいるようで。

荷風になりたい』で描かれる荷風のそんな複雑な人間性に興味を覚えて、彼の代表作の一つと言われる『濹東綺譚』を読んでみました。

今日はその感想を書こうと思います。



永井荷風(1879〜1959)
花柳界を舞台とした作品を多く発表した。形骸的な文明化、西洋化を批判し、失われゆく江戸の面影を偲んだことで知られる。1952年、文化勲章受賞。
代表作に本文で紹介した『濹東綺譚』の他に『腕くらべ』、『つゆのあとさき』などがある。


『濹東綺譚』の主人公・作家の大江は小説の取材をすべく、東京は玉の井の私娼街に日参していました。

そんなある日、ひょんな事から彼は私娼のお雪と出会います。

玉の井を訪ねてはお雪と話しているうちに、大江は親子ほども年の離れたこの女に惹かれていることに気づきます。

お雪も大江に好意を寄せていたようで、もうすぐ借金を返し終わったら「おかみさん」にしてくれるように大江に頼みます。


濹東(ぼくとう)綺譚 (岩波文庫)

濹東(ぼくとう)綺譚 (岩波文庫)

作中でお雪が大江の横で食事をした時、「ねえ、あなた。話をしながらご飯を食べるのは楽しみなものね」というセリフを言いますが、ひとり暮らしをしているとこのセリフが身にしみます(笑)


大江の心は揺れ動きますが、幾多の女性との関係を破綻させてきた自らを省みて、お雪を幸せな家庭の女にするのは自分ではないと考え、夏の終わりとともに彼女の元を訪れなくなるのでした。


摘録 断腸亭日乗〈上〉 (岩波文庫)

摘録 断腸亭日乗〈上〉 (岩波文庫)

摘録 断腸亭日乗〈下〉 (岩波文庫)

摘録 断腸亭日乗〈下〉 (岩波文庫)

1917年から死の前日までつづられた荷風の日記。「断腸亭」は空襲で焼け出されるまで住んだ荷風の邸宅をの名。
当時の風俗、文明・時事批評、来客、交友関係など内容は多岐に渡る。女性関係も赤裸々に書かれているそうです(笑)


さて、この大江のモデルは荷風自身ではないかと言われています。

また、荷風の日記『断腸亭日乗』にお雪のモデルになったと思しき女性の記述があることから、ある程度実話に基づいているとも言われています。

この作品がどの程度事実を反映しているかどうかは今さら確かめようがありませんし、今日の本題でもないので立ち入りません。

しかし、荷風のある種の心情なり願望の投影であるだろうとは思うのです(私が荷風の作品を読んだのは『濹東綺譚』が初めてで、そんなに彼のことを知っているわけではない。だからここからは大いに誤解している可能性のあることを承知で話を進めます)。

私には荷風が刹那的な女性関係を繰り返しつつも、一人の女性をただ愛したいと願っていたように思えてならないのです。


荷風は間違いなく女好きでしょう。

しかし、一方で女性や社会の弱者に向ける優しさや、一途さがあったようにも思うのです。

でなきゃ、モテるはずもない。

だがしかし、持続的な関係を築くのは上手とは言えなかった。

それ故に荷風は結果的に不誠実な男になっていったのかもしれません。

我ながらなぜここまで荷風の肩を持つのか不思議ですが(笑)、そんな荷風がなぜだか好きです。


さて、この作品を読んで思うのが、自分が大江の立場ならお雪の「求婚」を受け入れたかどうかということ。

私ならば受け入れたと思います。

なぜならば、幸せになるかどうかはやってみないと分からないと思うから。

どんな過去があれ、人を好きになったのならその思いに正直になっていいと、私は思います。


惚れっぽくて、気が多くて、女性が好きで、それでいて一途なところで、私と荷風はよく似ている。

だが、彼の生き方まで似ることもない。

死が二人を別つまで、彼女を温め続けられるような愛情を持てることを目指しましょう。


今日はこんなところです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。