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半平のきまぐれ日記

ADHD(注意欠陥多動障害)の就労移行支援事業所に通う20代が本を読んで、映画を見て、あるいはその他諸々について思ったことを気まぐれに綴ります。(※本ブログはAmazonアソシエイトを利用しています。また、記事中の画像は、断りのない限りWikipediaからの引用、もしくはフリー素材を使用しています)

頂に向かえ

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映画「富士山頂」とか、同じく映画の「劔岳 点の記」とか(原作は偶然にもどちらも新田次郎ですね。これらも別の機会に取り上げたい)、私は山や登山にまつわる物語が好きです。
おそらく、ひたすら一つの頂上を目指すという筋書が、私の性格に合っているのでしょう(笑)。
自分で登るのは1回で懲りましたけど(笑)。


そんな私にとって、今日ご紹介する小説はまさにうってつけでした。

来月には映画版の公開が控えています。


写真家の深町誠(映画では岡田准一)はカトマンズの街で、ひょんなことから20世紀前半の登山家・ジョージ・マロリーのカメラを手に入れます。
1924年にエヴェレスト山頂付近で相棒のアーヴィンとともに遭難したマロリーですが、彼らがエヴェレストの頂を踏んだのかは登山史上最大の謎とされています。
そのマロリーがエヴェレストに携帯したカメラは、その謎を解き明かす可能性を秘めていました。


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(ジョージ・マロリー 1886~1924)


マロリーの謎を追う内に深町は、数年前に失踪した孤高の天才登山家・羽生丈二(阿部寛)に出会う。
マロリーの謎とエヴェレストで前人未踏の挑戦を企てる羽生。
この二つを追う中で、深町は次第に羽生という人間に引き込まれて行く・・・。


この小説、私の下手なストーリー紹介を読む暇があるなら、とにかく読んでくださいと言いたい。
物凄く飽きっぽくて何冊もの本を同時並行で読む私が、この一冊に引き込まれて、1000ページ余りの内容を3日で読みましたから。


主人公の羽生は天才的な技術を持ちながら、あまりに癖の強い性格故に日本の山岳界ではすっかり孤立してしまいます。
しかしその実、誰よりも人との繋がりを求める。
しかし、彼にとってその手段は登山しかなかった。


羽生は実在の登山家・森田勝さんがモデルだと言われています。
森田さんも羽生と同じく、天才的な技術と癖の強い性格を併せ持った人だったと言います。
劇中、グランド・ジョラスで滑落事故を起こした羽生が満身創痍の中、右手足と歯だけを使って岩壁を登って生還する描写がありますが、これも森田さんの実話を元にしているそうですから、驚く他ありません。


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(森田勝 1937~1980 画像出典:「狼は帰らず アルピニスト・森田勝の生と死」 : カモシカクラブ)


劇中で羽生の登山家人生は壮絶な結末を迎えますが、それは皆さんがご自分でお確かめください。
私はただ、悲しい程に山に人生を賭け、痛々しいまでに純粋な一人の男の生き様にただ胸を打たれるばかりでした。
この気持ちをきちんと言葉にできないのが悔しい気もしますし、敢えて言葉にしたくない気もします(どっちやねん(笑))。


今日は最後に小説でも引用されている、マロリーとアーヴィンの最後の目撃者となったオデルの言葉を引いて、お別れしたいと思います。


今日はこんなところです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。


この世に生きる人は、全て、あのふたりの姿をしているのです。
マロリーとアーヴィンは、今も歩き続けているのです。
頂きにたどりつこうとして、歩いている。
歩き続けている。
そして、いつも死は、その途上でその人に訪れるのです。

・・・略・・・

その人が死んだ時、いったい、何の途上であったのか、たぶんそのことこそが重要なのだと思います。
私にとっても、あなたにとっても
(合本版 1057頁より)


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