呉越同舟inソマリア
いつも当ブログをご覧いただき、ありがとうございます。
今日は先日見に行ってきた映画の話をします。
「モガディシュ 脱出までの14日」
1990年のソマリア内戦でソマリアの首都モガディシュに取り残された韓国と北朝鮮の大使館員が協力して脱出したという実話に基づいた映画です。
この映画は珍しく人と一緒に見に行きました。
今月中に公開予定の映画3作品の中から一緒に行った人に選んでもらったんですが、正直私の中ではいちばん見たい映画は別にありました。
しかし、この映画を見終わる頃には一緒に見に行った人のセンスを称賛したい気持ちでいっぱいでした(笑)
いやあ、よかったです。
今年見た映画の中では「シン・ウルトラマン」の次くらいによかった。
まずは恒例のストーリー紹介。
1990年、韓国と北朝鮮の間では国連加盟をめぐって熾烈な外交戦が繰り広げられていました。
鍵を握るのは大票田のアフリカで、その中の1国ソマリアにも両国が大使館を開設し、ロビー活動を展開していました。
何とかソマリアの支援をとりつけようと韓国大使のハン(キム・ユンソク)は奔走しますが、元々ソマリアが社会主義国であったことや北朝鮮の妨害もあり、芳しい成果を上げられずにいました。
1990年12月、かねてより勢力を拡大していたソマリアの反政府軍が首都モガディシュに突入してきたことで、そんな日々は終わりを告げます。
モガディシュの街は戦場となり、政府幹部は逃亡。
おまけに反政府軍が在外公館の即時撤退を要求したことで、ソマリアに残された各国の大使館や在留外国人たちが危機にさらされます。
韓国大使館は政府軍に賄賂を渡すことで辛うじて安全を確保していましたが、そこに自国の大使館を反政府軍に襲われた北朝鮮大使のリム(ホン・ジュノ)、大使館員たちとその家族が助けを求めてやってきます。
ハンが渋々彼らを受け容れたことで、国外脱出に向けた奇妙な協力関係が始まるのでした。
私はこの映画で見るべきシーンが2つあると思っています。
1つ目は中盤の韓国大使館が現地の群衆に取り囲まれるという状況で、そこで群衆をなだめるために対外放送のテープを流すというシーンがあるんですが、そのテープから流れる文言と繰り広げられる情景の対比が、強烈な皮肉になっている。
この演出は見ていて鳥肌が立つぐらいゾワッとしました。
2つ目は終盤、無事にソマリアからケニアに脱出した一行が韓国と北朝鮮から、それぞれ出迎えを受けるんですが、その前後の流れが彼らが個人として共感し、分かり合えたことを示唆すると同時に、それでも互いの立場の違いから決して交わることが許されないことを象徴的に示している。
イデオロギーや国を超えて人と人が親愛や友情を抱き得るのだという希望と、それでもイデオロギーや国のちがいによって対立せざるを得ないという絶望を同時に突き付けられるような、胸が苦しくなるような葛藤を味わえます。
この2つのシーンを見るだけでもこの映画を見る価値はあると断言できます(あと、終盤のカーアクションも迫力があります)。
ソマリア内戦と言えばこの映画。時系列的には「モガディシュ」の2~3年後の時代になります。アメリカ軍が国連派遣の多国籍軍の名の下にソマリアに「人道的介入」を行った顛末を描いた映画ですが、政治外交に理想主義を持ち込むことの是非について激しく考えさせられます。「モガディシュ」を見た後に久しぶりにこの映画を見たくなりました。
ソマリアという国はアフリカには珍しく、国民の大多数がソマリ人で構成されているんですが、その点同じ民族同士で対立し続ける韓国と北朝鮮と似ていると言えるかもしれません。
おそらくこの映画の作り手もそこは意識していると思います。
だからここそ、韓国にとっても遠い国であるソマリアの内戦を、あそこまで生々しく描けたのだろうと思います。
そのあたりのメンタリティーは所詮4つの島の中で、比較的均質な民族構成でぬくぬくと暮らす日本人にはわかり得ないものなのかもしれません。
それでも私はこの映画を1人でも多くの日本人に見てほしいと思います。
感じ方は人それぞれあるにせよ、見た人の中にきっと何かを残す映画であると思うから。
今日はこんなところです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。