半平のきまぐれ日記

ADHD(注意欠陥多動障害)の会社員が本を読んで、映画を見て、あるいはその他諸々について思ったことを気まぐれに綴ります。(※本ブログはAmazonアソシエイトを利用しています。また、記事中の画像は、断りのない限りWikipediaからの引用、もしくはフリー素材を使用しています)

気持ち悪い小説(ほめてます)

いつも当ブログをご覧いただき、ありがとうございます。

私はまだ休職中ですが、最近はだいぶ元気が出てきまして、読書と映画で暮れて行く1日を楽しむ余裕が出てきました、

今日はそんな中で久々に再読した小説の話をしようと思います。

小野不由美残穢』。


原作小説


主人公でもあり語り手である女性作家の「私」に寄せられた読者「久保さん」からの手紙。

そこには最近引っ越したマンションの和室から、なぜか畳を擦るような音がするという些細な「怪異」が綴られていました。

興味を惹かれた「私」は久保さんとともに怪異の原因を追って、土地の歴史を調べ始めると、次々にとんでもない因縁が明らかになって―という筋書きです。

まずおもしろかったのは、付近の住民の証言と、古い地図といった史料を突き合わせて、土地にまつわる歴史を浮かび上がらせるという謎解き。

歴史学研究の手法そっくりで、大学で歴史学を専攻した私は、特におもしろく読みました。

同じ作者による実話怪談集。「おきにいり」と「欄間」は『残穢』と内容がリンクしています。実話怪談が99話。『残穢』とあわせて百物語になっているので、通して読んでみてください

 
小説を読むというのは、身は「実」の世界に居ながらにして、意識は「虚」の世界で遊ぶという、遊園地のアトラクションにも似た娯楽であると思っています。

残穢』を読むときももちろん、「虚」として読む。


しかし、女性作家「私」は設定的にどう考えても作者の小野不由美さん本人ですし、作中にも実在の作家が数人、実名で出てきます。

また、同じホラーでも「呪いのビデオ」のようないかにもなアイテムがあるわけではないし、強烈な個性を持った怨霊が出てくるわけでもない。

だれもに関係がある「住居」という場所で、「正体不明の音」、「見間違いかもしれないあるはずのないもの」、「なぜか人が居つかない部屋」といった、だれでも大なり小なり覚えがありそうな、

「ちょっと不可解な現象」が起こる。
その正体を確かめようとして、軽い気持ちで始めた調査が、思いがけない人間の業を掘り当て、一つの源へ収束していく―。


そして、どんな家が立つ土地にも連綿とした歴史がある以上、それはだれにとっても他人事ではないのです。

その事実に気づいたとき、安全な「実」の世界にいたはずが、いつのまにか「虚」の世界に立たされている自分に気づく。

いや、「実」と「虚」のどちらともつかぬような、そんな世界に放りこまれたというべきか。



映画版。原作をきれいにまとめた、ドキュメントホラーになってます。原作を読んでから見れば、ある「仕掛け」に気づくはず。ラストがあれでなきゃ、Jホラー有数の傑作になったと思うんですが・・・



私はこの小説を読み終えたとき、住みなれて気に入っている自分の部屋が、少し怖くなりました。

本作は山本周五郎賞を受賞しましたが、選考委員からは「この本をずっと家に置いておきたくない」という声があったそうです。

それもむべなるかな、怖いというより「気持ち悪い」読後感(ほめてます)。
これって本当にあった話なんですかね。


家や部屋にまつわる怪談と言えば「事故物件住みます芸人」松原タニシさん。タニシさんが実際に住んだ事故物件を中心にある種のドキュメントになってます。夏の夜のお供にぜひ


今日はこんなところです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。